偶然出会ったインターンシップで「コピーライターの道へ進みたい」と考えるようになった

2020.10.05


将来のイメージが湧かない、就きたい職業が分からない、就職活動は上手くいくのだろうか。多くの学生は働くことに対して様々な不安を抱いているのではないでしょうか。大学生のうちに色々なことにチャレンジして自分の興味のある仕事を見つけたいと思う反面、チャレンジすることへの不安や悩みがある人もいるはずです。

現在、ここ島根県雲南市では様々な取り組みが行われています。その取り組みの1つに、大学連携事業である雲南コミュニティキャンパス(以下U.C.C)の「実践型インターンシップ」があります。今回その活動にチャレンジした富永実穂さん(当時島根大学1年生)に話を伺いました。富永さんは大学入学までは長崎県に住んでいて、雲南市の活動についてほとんど知らなかったそうです。ではどうして雲南市の実践型インターンシップに参加されたのでしょうか。

偶然U.C.Cの活動の話を聴いて

Q.雲南市で建設業を営む中澤建設への実践型インターンシップに参加した理由を教えてください。

富永さん:私は今大学2年生で、インターンシップをした当時は1年生の夏休みの期間でした。高校の頃はずっと部活に打ち込んでいて、2か月間の自由な休みがあるのは人生で初めてのことでした。せっかく大学に入ったので何かをしたい!と思っていたのですが、何をすれば良いかわからない…と悩んでいました。そんなときに島根大学にU.C.Cの職員の方がいらしてU.C.Cの活動についてお話を聞き、せっかくの機会なので参加してみようと考えました。「実践型インターンシップ」の受け入れ先はいくつかありました。そのなかで中澤建設さんを選んだ理由は、私自身広告を作る仕事に興味があり、実習内容が新入社員採用のポスターを作るということだったからです。なのでぜひやってみたい!と思い参加しました。

建設業界は今、「きつい・汚い・危険」という、いわゆる3Kようなネガティブなイメージが付き、全国的に人材が確保できないことが大きな課題になっています。このような課題を少しでも改善するため、中澤建設ではネガティブなイメージが払拭できるような採用ポスターを作成するテーマでインターンシップを募集しました。客観的なアイデアを取り入れるため実践型インターンシップとして大学生を受け入れるようになりました。

実践型インターンシップは従来のインターンシップとは少し異なります。従来のインターンシップでは企業見学や企業の情報収集、仕事体験を行います。一方、実践型インターンシップでは受け入れ先のやりたくてもできなかった事業に期間限定の仲間として活動します。実際に社員と同じ立場で与えられた課題に取り組み、学生と受け入れ先の企業が真剣に向き合うことで双方が成長できるプロジェクトとなっています。大学生にとっては、社員と同じ立場で就業体験をおこなうことで積極的に意見を出せるため、同じ意志があればどんなことにでも社員の方々と一緒に挑戦し、簡単には解決できないような課題を企業全体で協力し解決することができます。受け入れ先の企業にとっては、普段の職場ではない客観的な意見を持っている「大学生」と一緒に取り組むことが、新たな課題や気づきを発見する機会になります。

 

試行錯誤しながらのポスター制作

Q.先ほどの質問で中澤建設で広告のポスター作りを行っていたとお聞きしましたが、具体的な実習内容はどのようなものでしたか

富永さん:新入社員採用のポスターなので、まずは中澤建設さんについて知ろうと考え、20人強ほどいる社員さん全員にインタビューさせていただきました。仕事のやりがいや苦労するところ、中澤建設で働こうと思った理由などを直接社員さんから伺いました。やりがいを伺ったときには社員さんそれぞれの思いがあって驚きました。完成したものを見たときの達成感や長く残り続けるものを作っていることに対する誇り、何もなかったところに自分たちの手で新たなものを造ることに対するワクワク感など、たくさんの思いを聞かせてくださいました。今まで社会人に対してあまり良いイメージを持っていませんでしたが、このインタビューを通して1つの仕事でもたくさんのやりがいがあって人それぞれの思いがあるのだと感じました。

またインターンシップの期間が1か月ほどあったので、社員さんにインタビューしながらポスター案を1日1個以上を目標に作り、結果キャッチコピー案は合計34個できました。その制作過程で雲南市内の採用ポスターのターゲットにもなる高校生にポスター案を見せてアンケートを取ったり、U.C.Cで出会った友達や高校時代の友達に意見を貰ったりしました。

最終的に決まったキャッチコピーが「道拓き放題」で、せっかく作るので実際に中澤建設さんが作った道路でポスターの写真を撮影しようと思い、雲南市掛合町の中澤建設さんが携わった道路に色々連れて行ってもらいました。30分くらい探して、ここが良いというところを見つけることができました。実際の社員さんを写した写真を喜んでくださった方は多かったように思います。

制作したポスター

 

視野の広がり、伝えることの難しさ

Q.様々な試行錯誤をしてインターンシップを行ってきたということですが、富永さんが実感した一番のやりがいや良かったと思うことはありますか

富永さん:元々広告を作ることには興味があったのでやりがいもあったのですが、高校生や友達など色々な人の意見を聞いて、自分で制作したポスターに対する第三者の意見や批評を聞けたということが自分の中の視野が広がって良い経験になりました。正直最初の方はポスター案が全然周りの人に伝わっていませんでした。ポスター案を作っていく上で自分はまだまだ実力が足りないと自覚できたことが良かったですね。将来、広告などキャッチフレーズや説明文をつくるような仕事をしてみたいと思っているので、今のうちにその仕事の大変さや苦労する点を経験できたのは今後の自信につながると思いました。今回のインターンシップで仕事の大変なところや苦労するところを実際に体験し、またそれらを周りに助けられながら自分で乗り越えることができたことが、働き始めたときに辛いことがあってもこの体験を思い出すことで仕事の励みになると思います。

今回のインターンシップで仕事の大変さや苦労を実際に体験し、またそれらを自分で乗り越えられたことが、今後勉強や仕事など様々なことにおいて頑張る糧になると感じました。

Q.一方でインターンシップで失敗したことや挫折したことはありましたか

富永さん:ポスター案の意見を聞いたときが結構メンタルに来ました(笑)。同級生の友達にポスターの意見を聞いたときに、「これ全然意味が分からない」や「全然伝わってない」など厳しい言葉をもらいました。社員さんにインタビューをして色々考えてポスター案を練って作ったので、まだまだ伝わっていない部分が多いと実感したときはショックでしたね。少し時間をおいて見返すと、確かに「これ全然伝わらないな」と感じることもありました。色々な人の協力を得ながらも実際のポスター制作は1人だったので、キャッチフレーズや説明の文面を伝わりにくいものにしてしまっていました。

Q.厳しい意見を貰ったり挫折を味わったりしたとお聞きしましたが、どのようにして乗り越え最後までやり遂げられたのでしょうか

富永さん:インターンシップ中に出会った社会人の方に意見をいただいて、それが心の支えになりました。その方に否定ではなく「こうしたらいいよ」と優しく且つ的確なアドバイスをしていただいたことがよかったのだと思います。

またポスターを制作したら時間を置いて吟味するように心がけました。その際には、なるべくポスターを初めて見た人の気持ちになって、伝わるかどうか、どういう気持ちになるか、心に残るかどうかを考えるようにしました。

 

今まで抱いてきたイメージの変化

Q.実践型インターンシップに参加したことで仕事や社会に対するイメージの変化はありましたか。

富永さん:社会人の方々に対するイメージがかなり変わりましたね。正直、元々社会人の方々や働くことにあまりプラスなイメージを持っていませんでした。就職したらあまりやりたいこともできなくなって、ただお金を稼ぐ、生活するために職場に行く、みたいなイメージがありました。ですがインターンシップで社員さんにインタビューをさせてもらったり(※)「中小企業同好会」という島根県の企業の方々が集まる場に参加させてもらったりして、イメージが変わりました。そこでは真剣に今後の会社、今後の島根県をどう活性化していくかというような話合いが行われていました。社会人の方々も自社の発展や地元全体の活性化など色々な想いや、やりがいをそれぞれもっているんだなというのがインターンシップを通してすごく感じました。

(※)雲南市内の中小企業家が自主的に集まり、悩みや課題・事業発展に向け意見交換をする会のこと

Q.実践型インターンシップに参加して普段の生活や過ごし方に変化はありましたか。

富永さん:映画のポスターやCMのキャッチコピーなどを見ると感じ方が変わるようになりました。実際私がいろんな人にインタビューをしてキャッチコピーを作ったので、この経験をした後に見ると、キャッチコピーというのは一見少ない文字数で簡単に作ったように見えるけど、あの何文字かにすごく色々な思いや努力が詰まっているんだろうなと感じるようになりました。キャッチコピーの見方が変わったと同時に、テレビ番組のちょっとしたコーナーやスーパーのチラシなど色々なものに対して、たくさんの人が動いて努力をして時間をかけて作ったんだろうなというように裏の部分まで想像するようになりました。

 

温かさと心強い安心感

Q.中澤建設の実践型インターンシップに参加する中で感じた「雲南市の魅力」はありますか。

富永さん:雲南市の方々は全員知り合いではないかと感じるくらい色々な人に私のことを知っていただいていました(笑)。1か月という少ない期間にもかかわらず、実践型インターンシップの取り組みを知っている市役所関係の人から「中澤建設にインターンシップしている子だよね!」と気さくに話しかけていただく機会がありました。これまで関わったことのない土地だったにもかかわらずインターンシップをしていることを認知され、市外から来た私を気さくに受け入れ、話しかけていただくことがとても心強く、安心感がありました。

 

より多くの知識を身につけたい

Q.中澤建設へのインターンシップに参加して様々なことを学んだと思いますが、これからチャレンジしたいことはありますか

富永さん:ポスター作りをさせてもらったとき、中澤建設さんはポスター作りの専門の方ではないにもかかわらず真剣に考えてくださって、一緒にポスター作りをしたことが凄く楽しいと感じました。特に社員さんへのインタビューが楽しく、2020年の春に、福島県でインタビューに関するインターンシップに参加したのですがそれもやはり楽しいと感じました。将来はコピーライターなどの道に進みたいと考えていますが、インタビューについても深く学んでいきたいです。

Q.最後になりますが、この記事を読んでいる同年代の大学生に向けてチャレンジする魅力などを伝えていただきたいです

富永さん:インターンシップで社会人の方々と同じ立場でプロジェクトを行い、また1か月間、社会人として実社会にいるような感覚を味わえることができました。U.C.Cでは他にもたくさんのインターンシップやチャレンジできる活動が募集されています。チャレンジを通して他の大学の方と関わること、何より大学のキャンパスの中だけでは体験できないことに向き合えることがとても魅力だと感じます。

 

編集後記

社員の方全員へのインタビューは実践型インターンシップだからこそできる経験だと思います。実践型インターンシップに参加された富永さんを取材して、富永さんのたくさんの成長を感じることができました。社会人の意見や想いを直接知る体験を行ったことが社会のイメージや将来の視野を広げる大きなきっかけに繋がるのだと感じました。

U.C.Cでは富永さんが参加したインターンシップだけではなく、他の実践型インターンシップもあります。またイイコト発見プロジェクトやスペシャルチャレンジなど様々な面白い活動が行われています。年間100名程度の大学生が参加しており、学生たちはお互いに協力しながら挑戦することができます。U.C.Cは実習先の方との距離が近いので楽しく交流ができたり、気軽に不安なことや悩んでいることを相談できます。

U.C.Cではなくても様々な活動に挑戦することが社会の面白さや新しい自分、本当に自分がやりたいことを発見することに繋がります!大学生時代という貴重な時間を上手く活用してみませんか?

追手門学院大学国際教養学部 中南蒼太
島根大学生物資源科学部   薮あす香